桜の花


桜。
日本人になじみのあるものの、この木が何?と問われると、アレ?ってなる。
専門的ではなく、わりかし大まかな見分け方を考察。
あと、各地で見てきた独自種も紹介。
花のつくり(おおざっぱ)
 花弁; 花びらのことで、一般的に一番目が引かれる存在。
八重桜などはこの枚数が判別に関わったりする。
 ガク、ガク筒; ぱっと見での判断で一番重要な場所。
大島桜系はふくらみの無いスーとした筒状。
彼岸系やシダレザクラはこぶ状になっている。
ひょうたんのような形からひょうたん桜の名前をもらっている巨木もあるぐらい。
ソメイヨシノはストレートながらヤマザクラより太目。
 雄しべ; この数で種別する場合もある。
雌しべ; 唯一無二。一つの花に一つだけ。(中には複数もってる種も)
樹皮; 花と共に樹皮も見てみると良い。
エドヒガンやシダレザクラは縦筋が入り複雑に織りなすような樹皮となっている場合が多い。
ヤマザクラは横筋がはいりややツルツル感のある樹皮となっている。
ソメイヨシノが分かり辛く、上記の特徴が出てたり出てなかったりする。成長するとツルツル感の無いヤマザクラのような状態になる。

一般的な桜

ソメイヨシノ(染井吉野)
人間の平均寿命より寿命が短いと言う珍しい樹木。
自然交配では無く、基本オールクローン。
大島桜と彼岸桜との雑種。
ガク筒が太いストレート状。

エドヒガン(彼岸系桜)
自然種の桜。
ガク筒の膨らみが特徴。
寿命が長く巨木古木はこの種が多い。
ガク筒に大きな膨らみ(こぶ)がある。この膨らみでソメイヨシノとの違いが判別出来る。
花弁もやや小さい。

シダレザクラ(彼岸系)
エドヒガンの変種が種として定着している。
枝垂れる原因は枝の成長が早すぎて枝が木になる前に重力に負けて垂れてきてしまうそうだ。
必ずしも彼岸系の枝垂れだけではなく八重があったりもする。
よく見かける枝垂れは彼岸系と同じくガク筒に大きな膨らみがある。

ヤマザクラ
日本の固有種であり、日本に自生する野生種の一つ。
故に個性があり、育っている場所によって開花時期が全く違う。
自然交配も多く花弁の大きさが違ったりしている。
この木の判別は開花と同時に薄茶色の葉が発生する。
花が散った後に葉が生えてくるソメイヨシノと判別出来ると思う。
個体によっては葉を出さないものもある。(鹿児島で経験あり)

地域独自桜(山口県)

尊正寺のエドヒガン(山口県萩市)
萩市の天然記念物となっている桜。
エドヒガン巨樹と言われているが、ガク筒の膨らみが全くない。
どうなってんだ?って調べたらワシの山口県での樹木バイブルにしている書物に記述があった。
ヤマザクラとの交配種である可能性があるようだ。

確認個体
山口県萩市 尊正寺のエドヒガン巨樹

ミドリヨシノ(山口県萩市)
ヨシノと付いているが、この木も彼岸系とヤマザクラの交配種の可能性があるそうだ。
花弁に色素が無く、さらにガク筒などの色が緑色であることから緑色が目立つ。
よって全体に緑に見える事からこの名が付いている。
名前からソメイヨシノと同一に思いがちだがしっかりした自然種という事で、開花時期が読めないのだと思う。
通例ではソメイヨシノより1週間早い開花時期となっている。

確認個体
山口県萩市 志都岐神社のミドリヨシノ
山口県萩市 江向のミドリヨシノ
山口県萩市 広雲寺のシダレザクラ
山口県萩市 旧萩市立図書館のミドリヨシノ(メモリアル)

オクチョウジザクラ(ヤマザクラ、山口県周南市)
ガク筒が香料の丁字と言う植物に似ていることからチョウジザクラの名があるそうだ。
野生種の一つだそうだ。
徳山百樹に選ばれている。

確認個体
山口県周南市 薬師堂のヤマザクラ

オゴオリザクラ(山口県山口市)
植物分類学で種の段階でヤマザクラの分類に入り品種ではヤエヤマザクラになるそうだ。
栽培品名でこの木に該当するものがなく、山口市(小郡)以外には無いそうだ。
ヤマザクラの変種で、花弁が通常の1輪5枚と違い3輪15枚前後ある。
雄しべは50本前後あるそうだ。


確認個体
山口県山口市 オゴオリザクラ(メモリアル)
子孫が新山口駅、碁中庵(山口市小郡町)で見られるそうだ。

園芸種や他県の独自桜

御衣黄
オオシマザクラを基に日本で作られた園芸種だそうだ。
江戸時代中期には存在していたようだ。
緑色の花を付ける事から、萩市ではこの木をミドリヨシノと勘違いしている人がいたぐらいだ。(同じ指月公園にある。)
緑色と言っても開花直後ぐらいで、時間が経つと花弁の中央からピンク色が出てくる。
開花すると花の重みで枝が垂れてくる。
開花時期が遅く、萩市ではこの木が萩の桜の終了を告げる木となっていた。
(最近佐々並支所前の楊貴妃の方が遅く咲く・・・。)

確認個体
山口県萩市 指月公園の御衣黄

楊貴妃桜
オオシマザクラ系統に属するサトザクラの代表種だそうだ。
そのためか、ガク筒はストレートになっている。
花弁は18〜20枚だそうだ。
よく園芸店で見かける楊貴妃桜と同じに見えないのだが・・・。

確認個体
福井県若桜町 福乗寺の楊貴妃桜
山口県下関市 慈光寺の楊貴妃桜
山口県萩市 佐々並支所前の楊貴妃

八重ヤマザクラ
正確な事は分かっていないようだが、ヤマザクラが基でオオシマザクラなどとの自然交配で発生した種と考えられているようだ。
花弁は10〜15枚でガク筒ストレート。

確認個体
山口県柳井市 春日神社のヤマザクラ
山口県柳井市 心光寺のヤマザクラ
山口県萩市 陶芸の村公園のサトザクラ(仮)
山口県徳地町 西宗寺の大ヤマザクラ

八重シダレザクラ
  この種も遅咲き。
エドヒガンの枝垂れるタイプでガク筒もこぶ状になっている。

確認個体
滋賀県彦根市 龍漂寺のシダレザクラ
山口県周南市 清涼寺のシダレザクラ
山口県萩市 川上のシダレザクラ
山口県萩市 南明寺(幼木)

河津桜
今後、ソメイヨシノに変わり、桜並木を飾っていくであろう桜。
カンヒザクラとオオシマザクラの交雑種だそうだ。
実は現在原木とされている個体が静岡県河津町に移植されてこの名がついているそうだ。
濃い色はカンヒザクラからだろう。
個人的には色が強すぎてあまり好きになれない。

個体確認
山口県周防大島町 西片の河津桜
山口県萩市 萩しーまーとの河津桜

陽光桜
四国の愛媛県で開発されたという桜。
アマギヨシノとカンヒザクラの栽培品種だそうだ。
この木もカンヒザクラの色が出てるんだろうな。
意外と目にする事が増えて、調べたらソメイヨシノ並木に取って代わる候補はこの木が本命のようだ。

個体確認
山口県防府市 春日神社のハート型の桜
山口県長門市 妙見山の陽光桜
山口県萩市 東光寺の陽光桜

玉縄桜
鎌倉市の神奈川県立フラワーセンター大船植物園で作られた。
名前の由来はフラワーセンター大船植物園の近くにある玉縄城だそうだ。
早咲きのソメイヨシノを選抜育成して定着させたようだ。
ソメイヨシノでありながら非常に早く開花する。
萩市においても4番目に早く咲く。
2月下旬には満開を迎え3月に入ると散り始める。

確認個体
山口県萩市 陶芸の村駐車場の玉縄桜

下田開国桜
聞いたこともない品種だ。
吉田松陰誕生地にお吉桜と共に2本ずつ植えられていた。
お吉桜の2本は枯れてしまったそうだ。
残った2本の名盤に下田開国桜とある。
ガク筒から見ると大島系に見える。
お吉桜もオオシマザクラの系統だそうで、この種よりも早く咲いていたそうだ。
いくら調べてもヒットしない不思議な桜だ・・・。

確認個体
山口県萩市 吉田松陰誕生地の下田開国桜
正福寺桜(兵庫県)
キンキマメザクラとヤマザクラの自然交配種で、兵庫県の固有種。
兵庫県の北部、新温泉町の正福寺にある。


確認個体
兵庫県新温泉町 正福寺のサクラ
兵庫県姫路市 善照寺の正福寺桜
兵庫県宍粟市 御形神社の正福寺桜
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